フィルム印刷加工関連 トービ 超低抵抗導電膜
先端産業分野で相次ぎ商品
●ITOをイオンプレーティング●ベンチャー企業新たな羽ばたき
(2004/4/5付
週刊包装タイムス)
業界有数のベンチャー企業、トービ(本社・大阪市城東区、寺谷照雄社長、TEL06・6968・5351)の新たな事業展開が、成長軌道を鮮明してきた。合成樹脂フィルムに透明で電気を通す金属酸化物を独自のイオンプレーティング法により蒸着し、製造する「超低抵抗導電膜」事業で、すでに太陽電池、液晶電気製品、有機ELなど最先端産業の主力パーツ分野で陸続と商品化が実現しているからだ。転写フィルム、シュリンクフィルムの老舗メーカーでありこれまで、「開発」を脚力に独自事業を繰り広げてきた同社だが、そのベンチャー的健脚は今後、産業最前線の分野で大きく羽ばたきそうだ。
蒸着膜製品は商品名「OTEC」。いわゆる透明導電性フィルムで、透明で電気を通し、ガラス基板とは違い軽量で曲げても落としても割れず、何よりも10Ω/□前後という驚異的な超低抵値を誇る。ベース基材はPET、PENなど透明、耐熱、成形性を備えるフィルムを使用している。
開発の鍵となった技術はイオンプレーティング。真空でプラズマ状態のままITO=インジュム・スズ・オキサイド(金属酸化物)を蒸着する技術で、基本的には同じ仕組みの「スパッタリング」に比べ、堆積速度が大きく、この高速蒸着が驚異の超低抵抗を実現した。
もう1つ、すでに世界で数社が事業化しているスパッタ法に対し、イオンプレート法の技術を繰り広げる企業は世界でも同社だけで(特許取得)、この優位性も見逃せない。
2年前から販促に乗り出したが、ことに昨年からは引合いが急増、太陽電池や液晶テレビなどいわば次世代主力製品として需要の膨らみが期待される先端分野で相次いで商品化が進む状況。
増販に向け確かな手応えを得た同社では、さらに幅広い展開への検討にも乗り出している。たとえば転写フィルムのパイオニアとしてかねて蓄積した転写技術を応用駆使し、成型同時転写(インモールド)によるITO移転もすでに開発を積極化しているそうだ。
同社は1953年10月の創業。グラビア印刷加工、オフセット印刷加工双方の老舗メーカーだが、半世紀余に及ぶその軌跡は何よりも「独自開発」のそれに通じる。蒸着シュリンクフィルム、転写フィルムの有数のパイオニア企業であるだけでなく、たとえばシュリンク付き台紙(吊り下げパッケージ)の開発でも先頭ランナーを演じた。
「OTEC」は業界ベンチャーとしての健脚を誇る同社ならではの開発製品であり、その独自路線を一挙に拍車をかける起爆剤ともなりそうだ。
ナノ粒子の開発受託、イオックス、米VBと組む
――LEDや太陽電池向け
(2004/4/7付
日本経済新聞)
ベンチャー企業を投資育成するイオックス(東京、中村吉人社長、03・5614・7346)は米ナノテクベンチャーのナノグラムと組みナノ粒子の開発受託事業を始める。ナノグラムが持つナノ粒子の開発技術を使い、企業の要望に合う大きさや機能を持つナノ粒子を開発する。
ナノグラムは炭酸ガスレーザーを原料に照射することで、均質なナノ粒子を大量生産する技術を持つ。イオックスが大手企業を紹介し製品開発を受託する。開発に成功した場合はイオックスや顧客企業が出資し、粒子製造の新会社を設立したり、相手企業に生産技術を売却したりする。
日本では主に発光ダイオード(LED)や太陽電池、ディスプレー関連に需要があるとみている。ナノグラムは米国で医療用バッテリーや燃料電池の分野で製品の能力向上に役立つナノ粒子の開発に成功。生産子会社を設立し他社に売却した実績もある。
深層断面/太陽電池メーカー、迫る黒雲なんのその
−世界需要は拡大一途
(2004/4/7付
日刊工業新聞)
太陽電池の市場が世界的に拡大している。世界生産量の半分を占める日本メーカーにとっては、まさに日がさんさんと照りつけている状況で、各社とも大増産のまっただ中だ。一方、世界需要の半分を占める日本市場は、住宅用太陽電池設置に対する補助金の減額、打ち切りが決まり、成長が鈍る可能性が出ている。シャープと三洋電機を中心に、海外戦略と日本市場の対策を追った。(大阪・松木喬、梶田良一、京都・広瀬友彦)
【独では投資に】
太陽電池に詳しい米PVニュース社によると、03年(暦年)の全世界の太陽電池の年間生産量は前年比32%増の742メガワットで、00年から3年間で約2・6倍に膨れた。世界的環境意識の高まりが追い風になっている。国によっては、設置費用を助成する制度や発電した電気を電力会社が買い取る制度を充実させ、普及に躍起だ。特に98年に原子力発電の廃止を決めたドイツでは、日本の2倍以上の売電価格を設定しているため、投資目的の導入が増えているという。米国も00年のカリフォルニア州の電力危機後、需要が増え、日本、ドイツに次ぐ市場になった。電気が行き届いていない無電化地域をかかえるアジア、アフリカでも市場が生まれている。北京五輪を控えた中国では、イメージアップのために太陽電池を導入しようという動きもあるようだ。こうした需要拡大の熱い“日差し”を受け、日本メーカーが大幅な増産に乗り出している。世界ナンバーワンシェアのシャープは、03年11月に年産能力を248メガワットに引き上げ、00年度比4・6倍とした。04年度も50メガワット増強し、2位以下を寄せ付けない年300メガワット体制を築く。三洋電機も急ピッチに生産能力を引き上げている。04年1月に「二色の浜工場」(大阪府貝塚市)を稼働させ、従来の2倍の年63メガワットに増強。さらに05年1月には2倍の年133メガワットにして、一気に国内2位に躍り出る。
《海外にシフト生産能力増強》
海外生産に乗り出す動きも活発だ。シャープは03年5月に米国でのパネル生産を始めた。さらに04年4月からは英国でのパネル生産にも乗り出した。現在の生産能力は米が年15メガワット、英が同20メガワットだが、早い段階で増産に踏み切る可能性がある。国内販売がほとんどだった三洋も、03年夏に稼働させたパネル生産のメキシコ工場を拠点として海外販売に力を入れていく。05年には海外販売を現在の10倍の40メガワット規模にする計画だ。
ただ、日本メーカーにとって気になるのがおひざ元の日本市場。日本の住宅設置件数は01年度約2万9000件、02年度約4万件、03年度約5万3000件と伸びてきた。しかし、今年度以降の住宅用太陽電池設置に対する補助金の減少、打ち切りが、日本市場の成長を鈍らせるのではという声が聞かれる。94年度の制度開始当初の補助額は1キロワット当たり90万円だった。それが年々減り、04年度は4万5000円まで減額。06年度には打ち切りになる方向だ。94年当時、太陽電池システムの価格が600万円(出力3キロワット)と高価だったが、現在はメーカーのコストダウンの努力で220万円前後(同)になった。補助金減額による設置者の負担を軽くするために、メーカーにはさらなるコストダウンが求められている。
《変換効率向上量産化も進展》
「補助金に頼った事業から卒業かな。国内の勢いをどうつなぎ止めていくかが課題」と、シャープの藤本俊彦前ソーラーシステム事業本部長(現海外事業副本部長)は、補助金制度の終わりをこう受け止める。シャープは量産効果のほかに、生産性の向上によるコストダウンを狙っている。
【セルを極薄化】
例えば、厚さ200マイクロメートルの“極薄”セルを量産化する計画だ。太陽電池はシリコンインゴット(塊)を何枚かにスライスして製造する。現在の240マイクロ―270マイクロメートルよりも薄くスライスすることで、よりたくさんのセルが取り出せるようになる。太陽電池システム全体のコストの4割を占めるシリコンの有効利用が図れ、コストダウンにつながる。量産化に適した技術の確立を進め、早ければ04年度中に200マイクロメートルを量産化する。「変換効率アップが手っ取り早いコストダウン」。三洋電機の井上浩ソーラーCRM
ビジネスユニットシステム部長はきっぱりと言い切る。変換効率とは、太陽光をどれ
だけ効率よく電気に変えているかを示す数値。三洋は19・5%と、世界最高のセル
変換効率を達成している。
【運搬費を軽減】
1枚当たりの変換効率が上がれば、使うセルの枚数を減らすことができる。セルが減
れば設置工数が減り、運搬作業の負担も軽くなる。つまり、全体的なコストダウンが
図れるというわけだ。
世界最高の変換効率は、結晶系と非結晶系シリコンを組み合わせた「HIT太陽電池
セル」で実現した。太陽電池の素材はシリコン系と化合物系に分かれる。シリコンの
中でも結晶系と非結晶系に分かれ、ほとんどのメーカーは結晶を採用している。
HITは、電圧の高い非結晶と電流の大きい結晶の長所をうまく引き出して変換効率
を高めた。研究レベルでは21・3%と、他社のさらに上を行く変換効率も実現して
いる。
《製品開発、ニーズ追求》
京セラは、03年6月に発売した住宅用システム「サムライ」が、発売1カ月で年間
目標としていた1万件の受注を獲得した。マーケットニーズを追求した製品開発を行
い、色やデザイン、小型軽量設計による施工性の良さにこだわったことが評価され
た。
同社は、セル表面にマイクロメートル単位の凸凹を作り、光の反射ロスを減らして発
電効率を高める独自技術を開発した。4月に発売する新製品は、多結晶タイプでモ
ジュール変換効率14・48%と、世界ナンバーワンを達成した。
発電量を目で確認できるモニターでもニーズをがっちりとつかんでいる。4・7イン
チの大型液晶に1日、月間、年間の発電量推移や電力会社への売電状況をカラーグラ
フでわかりやすく表示。音やアニメーションもあり、毎日の発電量チェックが楽しく
なるように工夫をこらした。
鐘淵化学工業は、他社と一線を画し、非結晶型を扱っている。独自路線を歩む理由
は、化学メーカーとしての強みが発揮できるためだ。
結晶系と違い、電卓に使われる非結晶は薄くて、加工の自由度も高い。そのため化学
メーカーとして蓄積してきた薄膜技術が生かしやすい。この技術を進化させ、非結晶
と薄膜多結晶を組み合わせたハイブリッド型も展開。モジュール変換効率は10%
だ。
【研究費は増加】
こうした技術競争と同時に、メーカー各社はコストダウン競走をさけて通れない。も
し、韓国メーカーが参入し、大増産をかけてきたらプライスリーダーになることは間
違いないからだ。半導体や薄型テレビ用パネルであっという間に世界のエレクトロニ
クスの勢力図を塗り替えてきた韓国メーカーは侮れない。日本メーカーには住宅以外
の用途開発も課題だ。04年度は国による住宅設置時の補助金は減ったが、研究開発
費は増えている。
世界最大手のシャープでも事業規模はまだ700億円規模。世界的な需要拡大の勢い
を生かせば、大きな事業へと飛躍できる。さんさんと照りつけている需要拡大の熱
を、コストダウンや用途開発へのエネルギーに素早く変換できるかどうか、日本メーカーの実力が試される。