2E07 阪大柳田研グループ
HMIm-Iを電解液として用いる場合について、アルコキシドのスプレー熱分解法により作成したさまざまな金属酸化物の緩衝層の効果について検討した。結果、TiO2よりバンドエッジがわずかに高いNb2O5が最も効果が高く、FTOからI-/I3-への逆電子移動をブロックすることでVoc,FF(580,0.55→649,0.67)が向上した。
2E08 シャープ
電解質溶媒の種類と組成により溶媒のドナー数(DN)を変化させ、JscとVocとのトレードオフの解消を検討した。DNの小さなアセトニトリルに対しTiO2との相互作用の小さなTHFを20vol%添加した場合、Jscを維持したままVocが上昇することがわかった。
2E09 京大吉川研
Ge,Nb,Hf,Sn,CeのアルコキシドとTTIPとよりゾルゲル法により調製したナノ粒子を用いたところ、Ge(~10mol%)を添加した場合にJscおよびVocの増加が示された。このとき、格子欠陥と粒子径の減少が見られ、色素吸着量が増加していた。
2E10 産業創造研究所(柳田グループ)
イオン性液体を電解液に用いると拡散速度の低下により変換効率が有機溶媒よりも劣るが、低粘性イオン性液体EMIm-TCMを用いることで最も影響を抑えることができる。さらにこれをアガロース(1wt%)によりゲル化した場合、擬固体化による性能低下も少ないことが示された。
2E11 岐阜大箕浦研
電解析出によるZnO電極は低温で作成され、結晶配向の制御も可能となる。また色調の異なる有機色素の複合化により広範囲の光を利用でき、将来的にRu錯体/TiO2よりも高い効率を達成できる可能性がある。
2E12 岐阜大箕浦研
ZnOの電解析出は電極近傍への酸素の拡散により動力学的に支配され、またEosinYが酸素還元の触媒として作用する。従って、色素の作用や酸化亜鉛の析出速度を考慮した解析が必要となる。
2E17 産総研
Ru錯体色素はアクセプター性配位子とドナー性配位子の組み合わせによりHOMO-LUMOのギャップを小さくすることで、長波長領域の吸収が可能となる。アクセプター性配位子をピリジルキノリン錯体,ビキノリン錯体とするとビピリジン錯体よりも長波長領域での吸収とIPCEの増加が得られるが、電極として用いたSnO2との準位差の影響により効率は低下していた。
2E18 静岡大藤波・昆野研
低濃度(~5mM)の酢酸亜鉛を添加した色素溶液によりSnO2電極に色素(EosinY, N3, NKX-2677)を吸着させたところ、色素吸着量とJscの増加を示した。また表面に酢酸亜鉛層が形成されることで逆電子移動の抑止によると考えられるVocの向上が見られた。
2E19 静岡大藤波・昆野研
CuI飽和溶液の酸化還元を用いた二次電池を一体化したDSCでは、放電用電極の活性炭層内でのイオン拡散や電解液の浸透が不十分となる。活性炭に代わりケッチェンブラック(高導電性カーボンブラック)を用いると、充放電効率が向上した(78→86%)。また放電用電極の集電材をPtメッシュからカーボンシートに変えても同様の充放電特性が得られた。
2E20 東工大玉浦・伊原研
局所電場増強効果を持つAgナノ粒子をエタノールに分散してチタニア電極に担持させたところ、Ru色素の吸光度を3.9~14倍に増加させることができた。このとき、Agナノ粒子の吸収ピークは熱処理温度によりシフトし、Ru色素の吸収ピーク(540nm)に近いほど増加効果は大きくなっていた。
2E21 東工大玉浦・伊原研
Agの腐食を防ぐためCo2+/Co3+電解液を使用し、Agナノ粒子を担持したチタニア電極の電池特性を評価すると、局所電場増強効果によりIPCEが2.3倍に増加した。しかしAgは触媒作用を持つため、電極からヨウ素レドックスへの逆電子移動が促進され、電池特性は大きく低下した。
2E22 東大瀬川研
導電性高分子(PPy)を電荷蓄積電極に用いた三極式光二次電池では、電荷蓄積電極基板をステンレスメッシュとすることで酸化還元応答がカソードシフトし、表面積の増加により充放電速度および蓄電容量が増加する。さらにPPy上へのカチオン交換膜の直接コーティングによりシステムの省スペース化や簡略化のみならず、蓄電量が30倍に増加し、解放電圧が安定した。
酸化チタンに単分子吸着したポルフィリン系色素は酸処理によりJ会合体を形成し、長波長領域での吸収が生じるようになる。このJ会合体は自己組織化膜であるため、色素分子の酸化還元準位は変化しない。
2E23 ソニー
高効率化のための各構成要素の最適化として、電解液中のI-濃度を増加させると導電率の増加に伴って内部抵抗が低減し、FFが大幅に向上した。また新規Pt対極の使用により反応抵抗と過電圧が、Nb2O5バリア層の導入により暗電流が低減され、FFおよびVocが向上した。以上を行うことで変換効率は10%→11.2%となった。
またシステムの違いから、DSCは結晶Si電池とは最適な発電環境が異なる。太陽よりも光量が少なく、スペクトル分布も異なる蛍光灯下では、SiよりもDSCの方が有利となる。
2E24 山形大向井・廣瀬研
DSCの内部抵抗成分について暗時の直列等価回路を仮定し、暗電流の測定結果とのフィッティングによりセルの直列抵抗(35Ω)を求めた。各抵抗成分を測定すると、基板導電層と導電層からの取り出し口の接触抵抗だけで直列抵抗の45%を占め、これらを除けば変換効率は28%(相対値)ほど向上する可能性がある。
2E25 東理大阿部・郡司研/産総研
電子拡散係数と電子寿命の測定により、N719およびBlack Dyeの色素溶液へのデオキシコール酸の添加効果について検討した。その結果、電子拡散係数には変化がなかったものの、電子寿命が増加する傾向が見られた。デオキシコール酸は色素の会合状態を抑制することで酸化チタン伝道帯への電子注入量を増加させ、また直接酸化チタン表面に吸着することで逆電子移動の抑制を行うと考えられる。
2E26 東京工芸大
トリスビピリジン-Ru錯体は光により励起されて還元状態となると、周囲のピロール/ポリピロールから電子を抜き取るため、高分子の重合剤として使用される。光源として微細なレーザー光を用いることで、微小な高分子の構造物を三次元的に析出させることができる。
2E27 京大吉川研
有機薄膜太陽電池のPEDOT層に酸化チタンナノワイヤーを分散し、有機膜内での導電パスの形成、電荷再結合の防止を試みた。ナノ粒子を混合した場合よりも、ナノワイヤーを添加した場合の方がJscやIPCEは高かくなった(Jsc:0.66→3.6)が、PEDOTのみの場合(Jsc:5.3)には及びもしなかった。
2E28 静岡大藤波・昆野研
有機色素およびCuI電解質を用いた固体化DSCに適した酸化チタン膜短絡防止層の作成方法について検討した。その結果、短絡防止層上に発電層を作るより、TTIPとナノ粒子の混合ペーストを積層させたものの方が色素(N3,D102,クマリン系)の吸着量は減少していたが、Jscが高くなった。このとき、IPCEや吸収スペクトルは長波長側へシフトし、サイズの異なる粒子が混在することで光散乱効果が高くなったためと考えられる。
2E29 京大吉川研
励起子発生分子BChleはP3HT:PCBMバルクへテロ薄膜内での励起子発生を促進するが、自らトラップサイトとしても作用するため4%以上添加することができない。そこで電荷分離状態が安定であるため寿命が長く、トラップ効果の小さなD-σ-A色素を励起子発生分子とした場合について検討した。結果、30%添加しても効率は変わらず、FFが低下していたことから、D-σ-A色素は電子輸送剤として作用するが、ホール輸送能力が低いことがわかった。色素のドナー官能基をホール輸送能の高いものに置換することで改善されると考えられる。
2E30 京大吉川研
有機太陽電池の薄膜内はバルクへテロジャンクションによりドナーとアクセプターの接触面積が大きいが、無秩序に配列しているため再結合確率も大きくなる。そこで特殊な溶媒も不要となる電解酸化重合を行い、アルミナ陽極酸化膜を用いた配列制御により逆電流の低減による高効率化を試みた。しかし接合面積はバルクへテロ薄膜に及ばず、微細化によるさらなる高表面積化と細孔へのアクセプター分子の挿入が課題となる。
2E31 静岡大藤波・昆野研
有機色素およびCuI電解質を用いた固体化DSCにおいて、緩衝層として用いられる酸化チタン薄膜の酢酸マグネシウム処理の手順の影響について検討した。いずれの色素(N3,D102,クマリン系)でもMgA処理と色素浸漬の順序によらずVocの向上が示されたが、Jsc、変換効率の向上はクマリン系色素でしか示されなかった。
2E32 阪大松村研
有機薄膜太陽電池は有機薄膜に加熱処理を加えること効率が向上する。このときの薄膜を観察したところ、TPD層が凝集し、結晶化やC60層との接触面の増加を引き起こしていることがわかった。またこのようなC60層表面に粒状化や凹凸が生じると、カソードとして使用するAg蒸着膜がC60層内まで侵入するためリーク電流の発生や励起子のクエンチングによりJscが低下する。これはC60層上にBCPを積層することで防ぐことができた。