1E03 三菱製紙
ポリチオフェン(P3HT)を用いた全固体型セルでのメロシアニン色素(インドリン骨格)の特性を評価した。色素の官能基の最適化により、より高効率のものを合成(D149,0.99%→D190,1.5%)。今後の課題として、連続使用時の劣化原因の解明、チオフェン層の光吸収および電子移動の改善が必要となる。
1E04 岐阜大箕浦研
セルのフルカラー化に必要なCMY色素の内、欠けている青色色素を対称型スクアリム系色素により合成した。ZnO電極に適した官能基としてはカルボキシル基が最適(1mM/EtOH)となり、色素吸着量、IPCEが向上する。※得られた色素のHOMO-LUMOを考慮すると酸化チタンで使用する方が適しているように思われる。
1E05 積水樹脂(箕浦グループ)
官能基の置換による非対称型スクアリウム系青色色素の構造の最適化(ZnO電極用)を行った。各色素のHOMO-LUMOの準位と変換効率の間に相関はなく、会合体の形成のしやすさが特性に影響する。会合のしやすさはアンカーとなるカルボキシル基のメチレン鎖の長さが影響し、特に炭素2個としたものはJscが向上する。また、デオキシコール酸の添加(1mM)により会合体の形成を抑制し、IPCE、Jsc、Vocが向上する。
1E06 阪大柳田研グループ
酸化チタン電極から電解質カチオンへの逆電子移動を防ぐために、吸着色素より内部へのカチオンの侵入を防ぐ必要がある。そこで、電子寿命(SLIM-PCV法)と色素カチオン寿命(過渡吸収測定)の測定より、色素および電解質(4級アンモニウム塩)のアルキル基鎖長の影響について検討した。その結果、色素配位子の炭素鎖長は電極へのI3-の拡散阻害効果は持たず、また4級アンモニウム塩はN719と併用したときのみ、炭素差が長いほど電子寿命が長くなった(Li<TBA<THA)。
1E07 東理大荒川研
適当な配位子の選択によりHOMO-LUMOの準位を変えることでBlack dyeより長波長領域での吸収を持ち、吸光係数を高くしたβ-ジケトナートターピリジンRu錯体色素を高純度に精製した。HOMO-LUMOの差により生じる励起状態からの再生の遅れを改善し、電解液中のI-、TBP濃度の最適化により、電解液から色素、色素から酸化チタンへの電子注入効率が向上することでBlack dyeを超える特性が得られた。
1E08 九工大早瀬研
ナノ粒子の分散によるイオン性液体電解液の擬固体化について、粒子表面へのイオン性液体の吸着によりイオンパスを形成することで、ナノ粒子の充填率増加に伴ったJscの損失を抑制した。イオン性液体の炭素鎖を長くし(C12-Im-Br)、自己組織化させることで強力なイオンパスが形成される。さらにアルミナ陽極酸化膜の細孔を利用してイオンパスを直線化することで、イオン性液体と同等のJscが得られる。
1E09 九工大早瀬研
Ru(bpy)3(PF6)2による発光素子は、多孔質膜の細孔内で反応が起きることで、Ru II, III の拡散・衝突頻度の増加と散乱効果により発光が強くなる。また直流と交流では電極近傍での生成するイオン種とその分布状態の差から発光機構が異なる。電解液溶媒を変えたところ、対極からの拡散の影響が少ないことから電解液の固体化を試み、液体電解液と同じ特性を得ることができた。
1E10 九工大早瀬研
エレクトロスプレーデポジション(ESD)により電極膜中の酸化チタンナノ粒子の積層構造を制御し、イオンパス・ナノパスの形成を検討した。ESDでは電子のナノパス形成に由来する電子寿命、拡散定数、拡散距離の変化はわずかであったが、イオンパス形成に基づく限界電流量の増加が見られ、これがJscの向上に寄与している。
1E11 九工大早瀬研
シート抵抗が低いFTOにはSnO2層に過剰のFやClが含まれ、特定の結晶面への配向、透明度の低下が起きる。このとき、ホール移動度に比較してキャリア濃度が過剰となり、また、チタニア緩衝層へのClの拡散により効率が低下する。
1E12 九工大早瀬研
酸化チタン表面を色素やカルボン酸で修飾することで電極薄膜内での電子の拡散距離が長くなることが報告されている。これは電子のトラップサイトが減少するためで、実際に熱刺激電流の測定によりトラップ電子の減少が確認された。また、表面修飾した酸化チタンにより作成したField Effect Transister(FET)で半導体特性の向上が確認されたことから、トラップの減少が示される。
1E17 ペクセル(桐蔭横浜大宮坂研)
プラスチックDSCの実用化に向け、酸化チタン粒子径、膜厚、電解液の最適化による高効率化を検討した。結果、酸化チタン電極は15wt%の250nm粒子を加えた60nm粒子を使用し、膜重量19gm-2(膜厚12mm)としたときに高い変換効率を示した。電解液溶媒は照射光強度が強い場合にはMPN/AN(1:1)、弱い場合にはMPNが適し、5.63% (1SUN), 6.24% (0.122SUN)を得た。
1E18 桐蔭横浜大宮坂研
ITO-PENフィルム対極にチタニア、アルミナナノ粒子を添加したPEDOT層を作成することで、ITOやPEDOTのみの場合よりも電池特性が大きく改善される。I-/I3-電解液中でのCVでは過電圧の減少と電流密度の増加が観察され、対極面積の増加に由来すると考えられる。
1E19 ペクセル(桐蔭横浜大宮坂研)
DSCの実用モジュールではセルの大型化に伴った集電効率の低下を改善する必要があることから、対極をTi合金スパッタ電極とし、電力の取出端にAgペーストとAl箔を用いて集電強化を行うことでFFが向上した。またキャパシタを介することで電力の安定供給を可能とした。万博にてセルを展示中。
1E20 ペクセル(桐蔭横浜大宮坂研)
DSCでは光源である日照が気象条件により不安定であるため、電力の安定供給のために電気二重層キャパシタとの一体化を試みた。活性炭蓄電層を導入した二電極式ではTiO2層が内部抵抗となってしまうため、中間電極を挿入して三極式とし、発電層と蓄電層をそれぞれ最適化することで充電・放電特性が大きく改善した。
1E21 シャープ
シリコン太陽電池は現在広く普及しているが、発電コストが高いことや原料ウェハースの供給が需要に追いつかなくなるなどの問題が予見されている。Si表面のエッチングによる散乱光の閉じ込めや裏面,電極構造の改良により高効率化が試みられているが、Si以外の新材料の探索と技術の確立が必須となっている。中でもDSCは発電単価が原料ベースで多結晶Si系の1/5と安く、低温プロセスでの作成が可能である。しかし、実用化のためには厳密な評価技術の確立、固体化、高効率化、集積化技術によるコスト削減が必須である。
1E24 京大旧足立研
TTIP,CTAB,エチレンジアミンの水熱合成にブロックコポリマーF127を添加することにより、焼成しても形状が崩れず、結晶性の高いナノロッドを合成した。これによるDSCではJscが色素吸着量に比例し、特に膜厚が10mm以上の場合にP25のような飽和を示さず、膜厚に比例した増加が示された(Eff:7.29, Jsc:13.07, Voc:0.767, FF:0.768)。
1E25 京大吉川研
水熱合成を高温(150~170℃)で行うことにより、ナノチューブが中軸のワイヤー状となり、耐熱性が向上する。これを用いたDSCでは表面積が低いため効率が低い(2%)が、処理時間を短くすると粒子の残留により表面積の高い試料となるため、効率が向上する(6%)。
1E28 静岡大藤波・昆野研
酸化チタンの短絡防止層の作成において、0.1M TTIP, 0.2Mアセチルアセトン/EtOHとしていたスピンコート液に0.4M塩酸とすることで粘性が高くなり、処理回数を少なくしても十分な効果の薄膜を作成できた。また、酢酸亜鉛より作成したZnO短絡防止層でも、わずかにVocの向上が見られた。
1E31 京大江口研
グルコサーマル法により得たシリカ修飾酸化チタンは結晶子径が小さく、色素吸着量が増加するが酸化チタンのみの場合より変換効率が低い。インピーダンス測定より粒界抵抗と色素からの電子注入量の減少が示されるが、TiO2ゲルと混合(30wt%)して使用することでこれらの成分の増加を抑制し、Jscが増加した。
1E32 日本カーリット
電解重合で作成したポリアニリン対極は適当なドーパントを添加し、膜厚を制御することでPt同様のI3-還元電位、レドックス反応速度、液界面抵抗が得られ、Ptに代わる対極材料として使用することができる。
1E33 エレクセル
ヨウ素イオンの存在下、ポリアニリン対極ではヨウ素レドックス反応が優先して起きるため、ドーパントの脱離やポリアニリン自身の反応による劣化が無い。また熱耐久性(65℃1000h)もあることから、DSCでの実用的対極材料となりうる。
1E34 静岡大奥谷研
ガラス基板に酢酸浸漬処理を行って親和性を持たせた上で、TBT, DBTDAを原料としてスプレー熱分解法でFTO層を作成した。この導電性基板では透明度が高く、抵抗が小さくなった。そのため酢酸処理を行わなかった場合よりIPCEが増加し、市販品よりVoc(0.66→0.71)、Jsc(14.4→15.8)、Eff(6.8→7.6%)が向上した。
1E35 静岡大藤波・昆野研
新油性スクメタイト(ルーセンタイトSPN)はMPIm-I中で層剥離し、MPImカチオンとイオン相互作用的に結合する。これにより擬固体化したゲル電解質では、MPIm-Iのみを用いた場合以上の性能を示すことができた。